株式会社伊藤建築設計事務所

中京テレビ放送本社ビル
伊藤・日建 設計監理共同企業体

    • エントランスホール
    • プラザC
    • Aスタジオ
    • マスター
      
    シンボルとしてのガラス貼りの電波塔
    中京テレビ放送本社は、1969年の開局以来の八事高峯町から、名古屋駅の南方に広がる大規模再開発エリア「ささしまライブ24」に移転した。新本社ビルは、11階建て高さ60m、その北東角に高さ160mのガラス貼りのシンボリックな電波塔を備えた建物である。電波塔に内在して展望用エレベーターを設置したことで躍動感が生まれ、刻々と様変わりするこの地区の景観に彩りを与えている。
    東日本大震災の教訓を生かし、災害への強さ・BCP対策を徹底的に追求した。名古屋の放送局では初めてとなる基礎免震構造を採用し、大地震時にも、放送局の機能維持を可能とする耐震性能を持たせた。エントランスホールの天井は特定天井の技術基準に従って災害時の脱落対策を行い、大臣認定を取得している。設備面では11階に非常用空冷式ガスタービン発電機3台を設置し、そのうち 2基は重油と中圧Aのダブルフューエル、 1基は重油専焼として7日間の連続運転ができるようなバックアップ機能を持っている。
    デザインイメージは、マスメディアの発信性、デジタル化からイメージされる鮮明性を表出させるものとし、メインとなるエントランスホールには、LEDによるさまざまな色を演出できる光壁と9面マルチモニターを設置している。

    部署の垣根を越えた交流を促すフロアイメージ
    2層分のオフィス階は、コミュニケーションを誘発し部局を越えた連携を高めるため、大部屋とし、建物中央にはコラボレーションエリアとそれを縦につなぐ吹き抜けのオープン階段を設け、俗にいう風通しのよい雰囲気とした。各々のコラボレーションエリアをそれぞれ異なるイメージの公園に見立て、思わず他のフロアにも声をかけたくなるような空間を演出し、部署の垣根を越えた交流を促す工夫をした。

    IMを活用し高品質な映像・音響空間を創出
    放送局の「心臓部」であるスタジオは、遮音や音場レベルを満たす音響性能、TVカメラがみじんも振動しないフラットな床、照明による影が映らない平滑なホリゾントの壁など、高い品質要求を満たす設計を行った。施工段階においてもBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)を活用し、複雑な納まりや3次元の詳細な検証を行うことで、高品質な映像・音響空間を実現した。

    犬飼高嘉
    所在地 愛知県名古屋市
    主用途 テレビ局
    事業主 中京テレビ放送
    建築主 中京テレビ放送
    設計監理 伊藤・日建 設計監理共同企業体
    施工 大林組 電気:トーエネック 空調:三機工業 衛生:須賀工業 昇降機:豊島(三菱電機・東芝エレベータ・ダイコー)
    構造 S造、一部SRC造
    規模 地上12階
    面積 敷地:7,120.52 ㎡ 延床:29,522.24㎡ 建築:4,321.87㎡
    竣工 2015年12月

    『建築画報372号』(2017.9)より抜粋