株式会社伊藤建築設計事務所

建築をとりまく環境と諸技術

緑化施設(大島造園土木豊田支店)

         

▷大島造園土木豊田支店―2008年竣工・愛知県豊田市

この建物は造園業を営む企業の支店事務所である。計画にあたっては、造園会社としての目的意識が改めてクローズアップされた。すなわち、緑化の推進を通じて良好な地域環境の形成と環境負荷低減に貢献していくこと。そのような目的に特化した拠点としての事務所づくりであった。設計のテーマとなったのは「エコロジー」および「緑化のデザイン」である。

そうした意識のもとにできあがった建物と外構は、多種多様な方法によって緑化されることとなった。この場所は、顧客にとっては実物サンプルが豊富に揃ったショウルームであり、地域の人々にとっては景色を個性的に彩りながらもその中に溶け込む新たなまちの一部である。そして職員にとっては、緑化の効果によって快適に過ごせる職場であり、また同時に様々な緑化工法を試して効果を検証できる研究施設ともなっている。

緑化による熱負荷低減の取り組み

建物の壁面・屋上を緑化することで日射の到達・熱の侵入を妨げ熱負荷を低減させ、同時に周辺の熱環境負荷を低減させている。さらに建物内外の温度を計測・集計するシステムを導入し、緑化の効果を定量的に評価して今後の建築物緑化の取り組みに繋げていく事としている。測定された温度は、エントランスロビーのモニターにも簡易なかたちでリアルタイム表示されるようになっており、訪れた人々が緑化の効果を確認することができる。

システム開発:大島造園土木株式会社

緑化部分の温度測定結果

この日の緑化部分と非緑化部分との建物面温度の差は最大19.4℃であった。また、計測した温度をもとに建屋内への流入熱量を算出したところ、屋上緑化による8時~19時の流入熱量の削減効果は70.4%であった。

壁面緑化(基盤造成型)による建物表面温度の低減効果は最大14.1℃、壁面緑化(ヘデラ登ハンシステム)による建物表面温度の低減効果は最大12.8℃であった。8時~19時の流入熱量の削減効果は48.7%であった。

データ提供:大島造園土木株式会社

周辺景観と調和する外観

敷地周辺の景観を特徴付けている最大の要素は、前面道路沿いに規則的に並ぶ街路樹である。建物のファサードは建築物の外壁と植物とが交互に並ぶ構成とすることで、整然と並ぶ街路樹と呼応して周辺の景観になじむよう計画した。

建物と植物とを一体的に見せるディテール

外壁のディテールは、建物をつくった後でその上から植物を覆い被せたような「あとづけの緑化」にならずに建物と植物とが一体となって見えるよう、緑化部分の建物外壁を非緑化部分よりも奥に設けて、成長したヘデラの面とガラス面・壁面とが概ね同面となる納まりとした。

多様な緑化方法

壁面・屋上・敷地内の緑化には様々な工法のものを採用し建物が緑化のショウルームとしても機能するよう計画した。また、それらの緑化工法の長所短所を逐次観察できる研究所としての機能も持つよう計画した。壁面緑化には3種類の工法(基盤造成型壁面緑化、多段式プランター型壁面緑化、地植型壁面緑化)が採用されている。